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僕のヒーロー「しょうぼうじどうしゃじぷた」

コラム作成者:徳島こどものとも社 松本崇史

僕が幼いころ持っていたコンプレックスの一つが「背が低い」でした。とにかく成長期が遅く、「小さい子」と扱われることが嫌で仕方なかったのです。そして何より同級生から「かわいい」と言われることが本当に嫌だった。やはり持たれたかったイメージは、周囲の同級生が持つ「かっこいい」というイメージだった。それが、保育園時代から僕が持っているココロだった。
そんな中、幼いころに僕が出会ったのが「しょうぼうじどうしゃじぷた / 福音館書店」という絵本でした。ある日、母親がこの絵本を買って来てくれた。もちろん、母に深い考えなどなく、この絵本が僕の人生観に、後々大きな影響を与えるとは思ってもみなかっただろう。

じぷた表紙

「この絵本の主人公のじぷたは、とある町の真ん中の消防署に勤務する古いジープを改良したちびっこの消防自動車です。ただ、その消防署には、それはそれは かっこいい別の3台もいました。はしご車ののっぽ君、高圧車のぱんぷ君、救急車のいちもくさんです。のっぽ君がいれば、高いビルの火事からも人を助けるこ とができる。ぱんぷ君がいれば、火はあっというまに消えてしまう。いちもくさんがいれば、どんな怪我人もたちまち病院に連れて行ってくれる。近所の子ども 達もこの3台の周りには集まってきて大騒ぎ。」
そう!この設定状況が僕の幼い心を貫いた。「じぷた」は間違いなく「僕」なのである。母がこの絵本を読んでくれてから、僕は夢中になり何回も「もっかい!」とせがみ続けた。

「物語はさらに続いていく。他の3台にも馬鹿にされながらも一生懸命働くじぷた。それでも、のっぽ君のはしごに、ぱんぷ君の力強いポンプに憧れ、いちもくさんの働きっぷりに「かっこいいなあ」と嫉妬し、自分は『とっても ちっぽけで みにくくおもわれて』悲しくなってしまうのです。」
また!ここで僕は心を掴まれた。僕が持っていたコンプレックスや他の子への嫉妬にも近い羨望。それを、こんなにも深く理解し、分かってくれているのである。こんなに嬉しいことがあるだろうか。自分の持つ悩みをわかってくれている存在がここにある。それは、心の底から自分のココロが救われた瞬間だった。そして、その気持ちを母もココロを込めて読んでくれている。それは、まさにココロのSHAREだったのである。

「そして最後に、山小屋の火事を消し止め、大災害になるはずだった山火事を未然に防いだじぷたは新聞にも載り、近所の子ども達にもついに、「やあ、じぷたがいるぞ!ちびっこでもうごくせいのうがいいんだぞ!」と言われるようになる。」
またまた!ここがさらに僕の心を包んでくれた瞬間だった。気持ちは救うだけではない、そのさらに先まで僕の気持ちを奮い立たせてくれるのである。ただの慰めではなく、人生の「真実」まで見せてくれたのが僕のココロのヒーロー「じぷた」なのである。
こういう体験を母親が僕に与えてくれたことは、なんとも幸運なことだと思う。何気ない気持ちで買ってきた物語絵本が、僕のココロを母と僕と絵本とでSHAREしてくれたのである。その共有した体験は、今も生き続け、30歳を迎えた僕の手元にあり今も読み続けている。それは、「どこかの」「誰か」がやってくれるものではない。家に常にあり続け、読み続け振り返ることができる自分の絵本だったからこそかけがえのない一生の宝物となりえたのではないだろうか。今、思うと母親は僕に絵本のあるライフスタイルを提案してくれていたのである。決して外注された体験ではない、大好きな母とコンプレックスだらけの僕とココロのヒーローじぷただけが生み出す僕だけのライフだったのである。

講演会様子

読み合い様子

徳島こどものとも社 活動内容

主に優れた絵本&おもちゃ&保育家具を徳島県の保育園や幼稚園に紹介し子ども達の幸せに尽力させていただいています。絵本専門店もあり、優れた絵本と幼年童話をそろえていますので、安心して本選びができます。他にも、各園での読み合い活動や講演会もお手伝いさせていただいています。

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