みなさま、新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
今年も、お子様と一緒に絵本を楽しんでくださいね。
今回紹介するのは、とり年にちなみまして、ひよこが主役の絵本です。
『とりかえっこ』(さとうわきこ・作 二俣英五郎・絵 ポプラ社)
ひよこが遊びに出かけた先で、次々に出会う動物たちと鳴き声を交換して、家に帰るというお話です。
ねずみ、ぶた、かえる、いぬ、ねこ、かめと順番に交換していく中でちょっとしたドラマがあります。
何といっても絵が味わい深いです。堂々としたひよこ、いきなりの鳴き声交換をすんなりと受け入れる動物たち。しかも、ぶた以降は「ひよこの鳴き声がおかしいな」とは気にもとめずに、交換してしまうので、周りにいる仲間はみんなびっくりしています。その、びっくりした様子もそれぞれしっかりと描き込まれています。
お話は、いたって淡々と進んでいきますが、描き込まれた絵からもいろいろなセリフや物語が想像できるので、とても面白いです。
加えて、絵の枠の右下にも遊び心満点のお楽しみがあります。ページをめくるたびに、たまごがだんだん割れていき、ひよこが生まれて歩き出します。子どもたちは絵の中の仕掛けを見つけたり、細かく絵を見て楽しめるので、絵本を読んだ後も何通りもの楽しみ方ができるのではないかと思います。
久しぶりに一人で読み返してみて、やはり絵に見入ってしまったのですが、もう一点とても気になることがありました。この子たちって、元の鳴き声に戻れたのかなということです。これって子どもの成長や人生のことで、出会った人と交流した後は元の自分ではなくなる。人との出会いでどんどんと変わっていくということを表しているのかなどと色々な深読みをしてしまいました。子どもと一緒に読むときと違って、一人で読むとまた違った視点で考えてしまったりしますが、これも絵本の面白いところだと思います。
それと、帰ってきたひよこに対してお母さんがびっくりした顔で、「おやまあこのこどうしたのかしら。」と言うのですが、この場面も何か心にしみてしまいました。小さい頃はずっと一緒に過ごして、ずっと目が行き届いていたのに、大きくなった今はそういうわけにはいきません。寂しさや心配もありますが、これも成長だからどうしようもありません。そのかわり、帰ってきた子どもの表情や様子をしっかり見て、何か変化はないかキャッチすることを心がけています。
ずっと自分と共にあって、その時々の状況で味わいを深めていける絵本、素敵だなあと思います。
コラム作成者:鳴門教育大学付属図書館児童図書室 川上 稚草