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徳島の伝統工芸品「遊山箱」

徳島に、「遊山箱」というお弁当箱があることを知っていますか?
昔、徳島には、旧のお節句に近い4月3日「遊山の日」に遊山箱を下げて、家の近くに遊山(海、山、川、公園、神社等)へ行く風習がありました(一部無かった地域もあります)。
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(4月3日「遊山の日」におひなさまと一緒に遊山)

現在70歳から90歳の方が、子どもの頃に一番盛んでした。遊山箱は、今のランドセルのように、子ども一人が1個を持っているという感覚でした。麦飯を食べていた頃に、この日だけは、お米の巻きずし、阿波ういろ、寒天、ゆで卵などを手作りして遊山箱に詰めてくれるので、当時の子ども達は、この遊山の日を心待ちにしていました。今でも、宝物の思い出として心に残っているそうです。

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(昔は遊山箱に巻きずし、お煮しめ、阿波ういろ、寒天、ゆで卵などが入っていました。)

この遊山箱は杉や檜で作った三段の小さい重箱が木の外箱に入っています。
大きさは12cm×13cm×17cmぐらいで、子ども一人用のお弁当箱となっています。中の三段の箱は、緑色、赤色、黄色に塗られています。外箱は、赤、ピンク、青、黄緑、黒など様々な色に塗られ、絵が描かれています。「遊山の日」は桜が満開の頃なので、桜の絵が多く描かれています。
三段の箱の色は、ひなまつりの時に飾られる菱餅に由来しています。緑色は大地を、赤色は心を、黄色は太陽を表していると言われています。徳島は、旧のお節句にひなまつりを行っていたので、おひなさまの前でも遊山箱を広げて食べていました。
しかし、昭和40年に入り、プラスチックの普及と生活習慣の変化により、遊山箱は廃れ、4月3日に遊山へ行く風習も無くなりました。遊山箱を知っている人は少なくなりました。

近年、徳島の伝統工芸品である遊山箱の復活運動が起り、木工職人さん達が遊山箱を作り始め、かわいい遊山箱がお店に並ぶようになりました。
私は、遊山箱を知ってもらい、どのように使われていたのか、子ども達に知ってもらい未来へ繋いで欲しい気持ちで、絵本『遊山箱もって』(絵・文 やまさきじゅんよ 原田印刷出版)を出版しました。

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当時の思い出のある方々に、この絵本の通りだったと言われました。この絵本を読むと遊山へ行ったことを思い出し、涙が出てくるそうです。この絵本を読んで、納屋にずっと置いてあった箱が遊山箱ということに気づいた方もいます。
また、遊山箱を購入し、子どもと一緒に遊山へ行き楽しまれた方もいます。
絵本の初めの見返しには、江戸時代から大正時代の昔の遊山箱や豪華な遊山箱の取っ手を描いています。昔の徳島は、藍が栄えていたので、取っ手にもお金をかけていました。後ろの見返しには、大正時代から昭和戦後までの遊山箱に描かれた蒔絵を描いています。遊山箱の歴史から使い方までもわかる構成となっています。ぜひ、絵本を読んで、遊山を楽しみ、遊山箱を未来へ繋いで欲しいです。
小学校で英語の勉強が始まった流れを受け、英語版絵本『Yusanbako』(絵・文 やまさきじゅんよ 英訳 デイビッド・アーンズ、ジャニス・アンバド 編集 マーティン・ホルマン 原田印刷出版)も出版しました。大変わかりやすい英語表現となっていますので、英語の勉強をしながら遊山箱の世界もお楽しみ下さい。
さらには、徳島の素晴らしい伝統工芸品「遊山箱」が世界へ広がってくれることを願っています。

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日英版絵本「遊山箱もって」、英語版絵本「Yusanbako」
絵・文 やまさきじゅんよ
英訳 デイビッド・アーンズ、ジャニス・アンバド
編集 マーティン・ホルマン 原田印刷出版(株)


 

作成者 やまさきじゅんよ (創作絵本作家)

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