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クリスマスに読みたい絵本

クリスマスに読みたい絵本

「こねこのウィンクルとクリスマスツリー」
「戦争をやめた人たち…1914年のクリスマス休戦…」

もうすぐクリスマスですね。夕暮れがだんだん早くなり、寒さが身に染みてくるころになってきましたが、街のイルミネーションやクリスマスツリーの飾りつけを見ると心にぽっと暖かな幸せを感じます。「クリスマス絵本」は今では数えきれないほど出版されていますが、少し古典的なお話の幼児向け絵本と、今だからこそ読みたい小学生以上の方におすすめの絵本を紹介します。
 

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「こねこのウィンクルとクリスマスツリー」
 ルース・エインズワース 作
 上條由美子 訳
 さとうゆうすけ 絵
 福音館書店 2021.10

 


「こすずめのぼうけん」で有名なイギリスのお話の名手エインズワースが、1961年に発表した作品に、さとうゆうすけさんが絵を描いて昨年出版された絵本です。

子猫のウィンクルは、母さん猫ときょうだい猫と一緒に暮らしています。
冬のある日、猫たちの住むお屋敷に、大きくて美しいクリスマスツリーが置かれました。
子猫たちは興味津々。「ツリーにさわってはいけません。」ときつく母さん猫に止められてしまいますが、やんちゃで冒険心の強いウィンクルは夜中にこっそり寝床をぬけだしてツリーにのぼりはじめます。上へ上へとのぼっていくドキドキ感とそのあと起こる大事件。幼い子の感情の機微を丁寧に描いたエインズワースの原作を美しく重厚感のある絵が彩ります。

昨年、幼稚園のお話会で読み聞かせをしたのですが、10分ほどかかるお話に子どもたちはずっと集中してウィンクルに寄り添ってくれていました。読み終えた後、「ほーっ」としたため息と
安堵の笑顔に、私自身読み応えを感じた一日でした。おうちでもぜひこの季節に読んでみてください。

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「戦争をやめた人たち…1914年のクリスマス休戦…」
 鈴木まもる 文・絵
 あすなろ書房 2022.5

今年2月に突然はじまったウクライナの戦争。一日も早く終わってほしいと世界中の人たちが祈っているはずなのに、9か月経っても終結の兆しすらみられません。これから寒い冬を迎え、インフラがつぎつぎと破壊されていく様を見るにつれ、ウクライナ市民の人たちの恐怖と苦労を想像し、到底他人事には思えません。ウクライナもまた、もうすぐクリスマスを迎えるというのに…。
日本の子どもたちは、この戦争をどう理解しているのでしょうか。作者がこの絵本を作り始めたとき、まだウクライナに戦争は起きていませんでした。あとがきの絵を描いているときに、ロシアがウクライナに侵攻を始めたそうです。
この絵本に描かれたイギリスとドイツの兵士のクリスマス休戦は、第一次世界大戦中に本当にあったお話です。クリスマス・イブに塹壕(ざんごう)でお互いに歌う「きよしこのよる」の聖歌に心を通わせ、翌朝銃を置き、歩み寄ってクリスマスを祝います。25日には戦いを止めて、サッカーの試合を楽しんだといいます。その美しい光景に心打たれ、平和の尊さと人間同士が戦うことの無意味さをひしひしと感じます。この絵本を読むことによって、きっと子どもたちにも伝わることでしょう。最後のページの「この星に、戦争はいりません。」という言葉と手をつなぎあった世界の子どもたちの絵。世界の願いです。

(作成者 : 認定NPO法人「ふくろうの森」 吉成悦子)

 

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