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重度心身障害の娘の「子育て」の不思議!

 娘の陽子が生まれる時、低酸素性脳症から脳性麻痺の障害が宣告され、私は初めて「障害」という現実を目の前に突き立てられてどん底に落とされました。でもこのままで終われない!と、がむしゃらに様々なことに取り組みながら、あっという間に25年の年月が流れています。
 今は、陽子がいてこその我が家。今でもやっぱり重度心身障害であることに変わりはありません。寝返りもできないし、しゃべることができないし、食べるのもペースト状でとろみをつけないといけません・・・でも、彼女が笑うと、言葉で言い表せないくらい幸せな気分になります。知っている曲に声を合わせたり、面白い話に声を立てて笑ったり、家の中をパッと明るくしてみんなを和ませる。陽子はまさに我が家のムードメーカーなのです!
 私は陽子が3歳の時、仕事を辞めて陽子のためにできることを精一杯していこうと決心しました。報酬はなくても、それが自分の仕事と思ったのです。簡単に言えば「子育て」が仕事ということでしょうか・・・。
そう言うと、今の時代、ちょっとつまらなく感じる人もあるかもしれません。ところがどっこい、これが私のライフワークにつながっていったみたいです。陽子の当たり前の生活を得るために、社会のシステムにも時には物申しながら、応援してくれる仲間もたくさんでき、苦しくても奮起して自分の思いに確信を持てるようにもなりました。そんな毎日の中で、陽子はたくましく成長していきました。また、陽子を通した願いは障害のある仲間たちの願いでもあると、障害児者の家族の会活動にも熱心に取り組むようになりました。
 陽子が5歳の頃、保健師さんに教えてもらい、心身障害児者家族の会にんじんの会(現、徳島県肢体不自由児者父母の会連合会徳島支部にんじんの会)に入会。発足したばかりの会の音楽サークル「ミックスジュース」にも入って、大好きな音楽活動をするようになりました。そして現在に至り、「ミックスジュース」はもう20年の活動になります。みんな大人になりましたが、小さいお友達も加えてますます元気に活動し、毎年あちこちのイベントで演奏発表したり、2年に1度自主コンサートを開いたりしています。障害の種別も程度も様々な仲間たちと家族、そして多数のボランティアで和気あいあいと音楽を楽しんでいます。各自ができる方法を駆使した演奏を笑顔いっぱいに披露することが、聞く人の心を温かく嬉しくするのが「ミックスジュース」のモットーです。随時、メンバーならびにボランティア募集しています!
 さらに5年前より、にんじんの会の他、県内各地域にある7つの障害児者の家族の会をまとめて、徳島県支部として全国とつながる連合会組織を整備しました。徳島支部の仲間だけでなく、今は県内各地に仲間の輪が広がりました。そして連合会として、7つの支部と社会をつなげる様々な活動を展開しています。
 その一つが「バリフリBOX」です。今年も12月9日、10日に小松島市の徳島赤十字ひのみね総合療育センター他ハナミズキゾーンで行います。障害児者のための福祉機器展として、また様々な情報、学び、遊び、相談もできる楽しいイベントとして毎年開催することにしています。当事者家族や関係者、地域の方々も含めて障害児者の理解を深め、社会で共に生きるノウハウを共有できる場にしたいし、来場者が安心して楽しめる企画や会場づくりをしているので、たくさんの方々に来て欲しいです。
 こうして、陽子の「子育て」から仲間のつながり、地域のつながりへと、たった一つの家族のあり方は子供を通して社会貢献まで広がってきました。仕事をしていた頃の同期の仲間とは今も年に数回会っていますが、「みきちゃんは凄いなぁ!」「顔広いなぁ!」と言います。もう管理職になっている友の言葉に、「えぇ?!」って笑ってしまうけど、私たち障害児の親は、いっぱい泣いて悩んで、いっぱい努力して、いっぱい人とつながって、いっぱい社会貢献もして・・・そういう姿を「凄いなぁ!」って言ってもらったと考えると、私たちの活動もかなりイケてる!いや、より人間らしい当たり前の生き方の素晴らしさを示せているのではないか?とちょっと嬉しく思います。
 時折、昔の大変だった頃を振り返ると「あの時の頑張りは、とてもじゃないけど今出来ないね」と家族と話します。でも、あの頃は出来なかった頑張りを、今の私たちでこそ出来ているかもしれません。もう50歳も半ばを迎えた私も、人間的に随分成長した訳です。そして夢も希望もまだまだあって、まだまだ成長していくぞ!と思うとワクワクが止まりません。また嬉しいことに、そのワクワクを一緒に感じられる仲間が周りにたくさんいます。私のこの脳天気さとエネルギーは、陽子が作っているのかな?本当に不思議。つまりは、「子育て」って不思議がいっぱいってことかも!
 ん?もう25歳の子に「子育て」は無いだろうって?それもそうですよね。今は、同じ願いで進む同志ってところでしょうか。そしていつかは・・・彼女が私を支える人になるのかもしれませんね。

コラム作成者:圓井 美貴子

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