トップ支援者・団体向け研修会情報研修会報告令和2年度 第3回 被災児童保育ボランティア養成講座

令和2年度 第3回 被災児童保育ボランティア養成講座

日時

令和2年8月28日(金)14:00~16:00

場所

徳島市万代町3丁目5-3
 徳島県職員会館 2階会議室

参加者数

22名

その他

 本年度の本講座は、検温、換気、マスク着用、手指のアルコール消毒、会場内の消毒、講義形式での実施など新型コロナウイルス感染拡大防止対策を講じて開催。

「災害と子どものこころ」

講師:井出 浩さん(浅野神経内科クリニック精神科医師・関西学院大学人間福祉学部教授)

         IMG_3543-1.jpg     井出2-1.JPG
                          

 災害は、子どものこころにどんな影響を与えたのか。災害の影響を克服するにはどのような大人の関わりが必要なのか、阪神淡路大震災の経験を振り返りながら学びました。

<講義>

阪神淡路大震災が小中学生に及ぼした心理的影響(小・中学校調査から)

・不安や恐れは、災害直後から現れ、早期に改善し始める。
・抑うつ気分や心身症的な訴えは、遅れて出現し、長期に持続する。
・低学年児童ほど多くの問題を呈する。
・女子の方が男子よりも強く反応する。特に、抑うつ気分や心身症的訴えが、女子では長期に
 続きやすい。

子どもたちが阪神淡路大震災後に示した反応  

 ①年齢の低い子どもたちが地震直後から示した反応
  
〇緘黙 〇親から離れられない 〇家に(避難所から)帰りたがらない 〇夜驚、夜泣き 
  〇指しゃぶり、爪噛み、夜尿、頻尿 

 ②もう少し年齢の高い子どもたちの示した反応
  
〇眠れない、暗くすると怖がる 〇寝ることを怖がる→寝るとそのまま死んでしまうのでは
  ないかという不安 〇過食 〇音や振動に敏感、集中できない 〇攻撃的、イライラ、乱暴
  な遊び

 ③さらに年齢の高い小学校中学年・高学年の子どもたちが震災後時間が経ってから示し始めた
  反応
  
〇孤立 〇円形脱毛 〇チック=本人の意思とは関係なく急に不規則な身体の動きや発声が
  繰り返し起こる 〇腹痛 〇不登校

PTSD(心的外傷後ストレス傷害)

 上記において、子どもたちが示した反応を紹介したが、なぜ子どものケアをしなければいけないのか。それは、精神障害の一つであるPTSDにならないためである。
 PTSDとは 
 存在を脅かす出来事(命が奪われそうな出来事)の体験
 
この体験によって
 ・侵入的な記憶フラッシュバック(他のことをしている時に突然、記憶が生々しく思い出さ
      ⇓     れる)
  再体験(今、正にその出来事が起こっていて、「死にそうだった」恐怖心「何もできなか
      った」無力感
など、その時の感情が蘇ってきて、再び心が傷つく)
 ・回避・麻痺(その外傷を思い出させるような行為、場所、人等だけではなく、社会そのもの
        を避けようとする。人と関わることが嫌になってくるなど)
 ・過覚醒(イライラする。眠れない。ちょっとした物事に過剰に反応するなど)

 以上の症状が1か月以上続く場合にPTSDと診断される。
 命を守るための当然の反応であって、生きていくために必要だが、それが悪さをするのがPTSD。
 出来事が起こった直後の、こういう反応が長引いてしまうのが問題で、長引かないように早めに心のケアを行う必要がある。 

災害はこころに何を残すのか

 大きな災害、命が奪われそうな災害によって
 ・安全な場所がないと感じる⇔普段は自分がいつ死ぬかなんて考えていない(社会は安全、
               自分を守ってくれると考えている)
 ・生きる価値がないと宣告されたように感じる
 ・自分は何もできなかったと感じる

 「ここにいてよい」という感覚を揺るがすことが最大の問題
    ||
  自尊感情(自分の存在に対する信頼感)
  一人の人間としてこの社会の中で生きていくということができないのではないかという感覚
  がどこかで働いてしまう。

 「ここにいてよい」とは、常に子どもたちが健康に育つために必要な感覚だが、災害が損なっ
  てしまう。
  →「ここにいてよい」という感覚を取り戻す
   ・安全な場所がある=守られている、助けてもらえるという体験を重ねながら感じ取って
             もらう
   ・生きる価値がある=受け容れてもらえる(自分が大事にされている)、役割がある(社
             会の中で役立っている)と感じてもらう
   ・自分には対処する能力がある=やり遂げた(どんな事でも良い、一つのことをやり遂げ
                  る) 

  災害で子どもが恐ろしい目に遭って自信をなくしかけているので、丁寧に関わることが必要
 だが、特別な関わりでなくて良い。日常生活の中でできることを丁寧にもっと優しく言ってあ
 げるとか、直ぐ対応してあげるなど、わずかな工夫が十分ケアになる。
  子どもにとって大事なのは、日常普通に関わってもらえること。

災害の三つの影響

 〇災害の恐ろしい体験によって、フラッシュバックなどの反応が生じる。
 〇いつもと違う自分への不安。こういう反応を示している自分がおかしい。このままではダメ
  だと思う。
 〇災害後は環境が変わっている。普段であれば子どもたちが精一杯動き回って上手にストレス
  を発散できた場が失われる。

子どもたちに関わる時に気をつけなければならないこと 

 ・記憶をどう扱うか(災害のことを思い出す時にどうするか)
   記憶を語ることのできる子どももいれば、語れない子どももいることを知っておく必要が
  ある。
   ⇒記憶を無理に呼び起こされると、再び傷つくことがある。語ることができるには、恐ろ
    しかったことを思い出しても耐えられるだけの力が備わっていないと無理。「ここにい
    てよい」という自尊感情が戻ってきていれば、少々傷つけられても辛いことでも語るこ
    とができる。
 ・受容の意味
   
自分を受け容れてくれているということが「ここにいてよい」という感覚につながる。
   ⇒子どもたちの怒りや苛立ちなど全ての感情を受け容れる。しかし、全ての要求、行動を
    受け容れるわけではない。殴る、蹴るなどはダメ。感情と行動をどう切り分けるかが重
    要なポイントとなる。
 ・Post traumatic play(外傷体験を再現する遊び)
   阪神淡路大震災の時には「地震ごっこ」、「遺体安置所ごっこ」という遊びがあった。
   子どもが主体となってコントロールして進めていける遊びなら良い。コントロールできれ
  ば、「自分は何もできなかった」という無力感を克服するのに役立つので、止めるのではな
  く見守るだけで良い。
   気をつけなければならないのは、トラウマの再体験となる遊び。自分でコントロールでき
  なくなる場合がある。その場面が思い出されて、楽しくないのに繰り返してしまう遊び方。
  ボーッとした感じの怖い硬い表情で、地震、災害、津波に触れる遊び。これは止めるべき。 
 

 感想

  • 多くの事例を紹介いただき、非常に参考になりました。子どもを支援していく中では、「見守ること」も重要な役割であることを学びました。
  • 災害時はもちろんだが、日常の中での子どもたちの心身の発達についての関わり方も学ぶことができた。専門的な方法ではなく、その知識を持たずともできることがあることを知ることができた。先生の話の中で、本テーマとは外れる話もとても興味深かった。
  • 実際に災害の現場で、子どもやその家族にどう関わっていくのかを普段から考えておく必要がある。全てを受け容れることは大事だが、気持ちを受け容れることと行動(良くないと思われること)を受け容れることは違うといことがよくわかった。
  • 阪神淡路大震災のこと、その当時の子どもたちの様子がよくわかった。不安(体験したことのない)でいっぱい。日中には現れないことが暗くなって、夜中になって出てくるんだと思った。しっかり抱きしめてあげることが一番だと、受け止めてあげることが大切だと思った。
  • 災害時に起こる子どもの状態から具体的な支援の方法まで教えていただき、大変勉強になりました。特に、具体的な支援方法について、専門的に学んでいない方でも実践できそうな内容だったことが良かったです。
  • 被災している子どものことは何でも受け容れようと思ってしまいそうでしたが、暴力などしてはいけないことはダメだとしっかり注意していけるようにしたいと思いました。

カテゴリー

地図

トップへ戻る