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令和2年度 地域子育て支援者の専門研修会

日時

令和2年10月16日(金)14:00~16:00

場所

とくぎんトモニプラザ(青少年センター)会議室

参加者数

26名

「子育て支援者の困り事について」講師:山本 真由美さん(徳島大学大学院社会産業理工学研究部教授)

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講義概要(要旨)

キーワードは対人関係

 皆さんは、窓口で相談を受けたりしておられると思いますので「相談者」ということになり、相談に来られる方は「来談者」ということになる。それに加えてアウトリーチ先(相談していく先)の担当者や皆さんの同僚等との間の対人関係というものがキーワードとなる。実際に保護者等からの相談を受ける場合、様々な相談を受けることとなる。この際において、自分の仕事の範囲や立ち位置を明確に考えて対応する必要がある。このため、予めいろいろな関係機関の業務の内容を把握しておいて、どこまでが自分が相談を受けるべき範囲なのか、どこまでなら責任を持った対応が出来るのかということを理解しておく必要がある。例えば、ある高校の校長先生が精神障害のある保護者への対応に関して、その精神障害の部分を含めて学校で丸抱えで考えようとしていた事例がある。やはりこの場合は、生徒や保護者の気持ちに配慮しながら、保護者の精神障害の部分については病院等へ橋渡しする方向での対応が望ましい。

 一方、私がこれまでに相談者からの相談を受けてきた中で、相談者から「困った」事例として聞くのは、保護者との関わり方であったり、同僚等との人間関係に起因するものが最も多い。相談業務を円滑に行っていく上では、保護者や同僚あるいはアウトリーチ先の担当者との人間関係というものが非常に大きな要素となる。このため、日頃から自分の立場だけを考えるのではなく、相手や相手の立場に対する心遣いというものも大切である。ただし、ここで私が皆さんに伝えておきたいことは、相手に対する心遣いも大切だけど、同時に、働いている皆さん自身の心も大切にして欲しいということ。「キーワードは対人関係」そして「相手の心も自分の心も大切に」

来談者対応への気づき

 ○対応のはじめ 

  来談者が来られた時点でまず挨拶をする。相手は勇気を出してきている場合もあり、それをねぎらう気持ちで挨拶をしながら相手をよく観る。皆さんは専門職なので、この時点から相手がどういう人なのか。どういう目的できたのか。ということについて観察を始めてください。この時に大切なことは、相手は来談者であり皆さんは仕事上の専門職であるわけですが、人間どうしとしては来談者と対等の関係であるという意識を持って、来談者の心をほぐす対応(あーあそうなんですね。大変でしたね。とか)を心がけながらしっかりを話を聞いていただきたい。

 ○目的がわかったらそれに合わせた対応を

 いずれ話の本題に入り、来談者の目的がわかってくる。目的は多くの場合、次の3つに分類される。1、不安がある。2、解決したいことがある。3、情報を求めて。来談者の目的が単に「情報を求めて」という場合は、可能な限りの求める情報の提供に努めればいい。それ以外の場合は、相談の内容に合わせて、例えば、「行政の窓口に相談してみたらどうですか。」とか、「養護施設で話をしてみるのもいいかもしれませんね。」とか、具体的なアドバイスをする。但し、このときに留意して欲しいことは、「○○してみたらどうでしょうか。」というような感じで、決して上から目線でなく、決定権はあくまでも来談者にあるとの前提で自己決定を促すようにもっていくことが大切。                                                                                                                                                                              

最近の人が抱える問題(1) 人格(パーソナリティー)障害について

 全般的な話として、パーソナリティー障害の人は、しばしば(医師を含めた)周囲の人に対する一貫性がなく、困惑させ、フラストレーションを与える。自己と他者との境界を理解することに困難を生じる場合がある。自尊心が不適切に高いまたは低い場合がある。育児のスタイルが一貫しない、冷淡、感情過多、虐待的、または無責任なことがあり、そのようなことが配偶者または子どもの身体的及び精神的問題につながる可能性がある。・・(MSDマニュアル検索) このような特性を持った人が相談に来られる場合もあると思う。今日は、これらのパーソナリティー障害の分類の内、窓口に来られる可能性の高い3つのタイプについて話をさせていただく。

  • 境界性人格障害

 この障害の人の特徴は、例えば友人に「明日の午後に会いたい」というメールを送ったとして、その返信で、「明日は予定があるので会えない」という内容であった場合、普通の人なら、あーそうか、それならまた別の日にしようかというふうに考えるものだが、これが境界型人格障害のある人だとそうはならず、この障害の人は常に、相手がどれだけ自分のことを大切に思っているかということを試しているため、たとえ1回でも自分の要求を断られたら、それまで親しくしていた相手であっても手のひらを返したような態度を取ることがよくある。こういう人が来談者である場合の対応はかなり難しい。以前は心理分野での対応方法がわからず医師に送っても、治療薬もないことからまた心理に戻されたりするような障害であった。現在はある程度、心理分野での対応が可能となってきている。どうしてこういう人が出来るかというと、原因がちゃんと解明されているわけではないが、現時点では、幼児期の虐待(基本的な信頼関係の欠如)に起因するのではないかと考えられている。                                                      

  • 反社会的人格障害

 この障害の人は、道徳的観念が欠如しており、他人がどれだけ困ろうと関係なく自分の非は絶対に認めないという特徴がある。例えば、遅刻をした中学生に理由を尋ねた場合に、自分は全く悪くなく、来る途中の信号機がほとんど赤信号だったことが悪い、というような主張をして譲らないというような感じ。また、サイコパスも反社会的人格障害によく似ている。この人たちは、頭がよく自己中心的で自分がやりたいことのためには平気で人を騙したりする。また、自尊心が異常に高く、常に上から目線で自分の非を認めることはない。原因として、遺伝的因子としては脳のダメージが影響している可能性があるが、環境因子としては幼児期の虐待に起因するのではないかということが言われている。

  • 依存性パーソナリティー障害

 この障害の人は、全てにおいて依存的であり、自尊心が非常に低く、自分で何も決定出来ない。例えば、あなたはどうしたらいいと思いますか?という問いかけをした場合でも、どうしたらいいですか?という答えが返ってくる。この障害に関しても、幼児期において保護者等から否定的な言葉(やっぱりお前はダメな人間だ!というような)を言われ続けた子育てに起因するところが大きいと思われる。

 このような人格障害があると思われる人が窓口に来られた場合は、まずは一度相手の話を聞いた上で、その後の対応は、同僚等と相談して慎重に対応する必要がある。また、幼児期の子どもへ虐待等が成長してからの人格形成に大きく影響すると思われることを考えると、その幼児期の子育てを支援する立場にある皆さんの仕事がとても重要なものであるということにもなると思う。

 

 最近の人が抱える問題(2) 発達障害について

 発達障害は、人により症状の程度に幅がある。また、症状が軽度である場合、子どもの頃に発達障害に気づかれないまま過ごすこととなり、後に、就職や結婚あるいは恋愛といった人生の過程において仕事や対人関係がうまくいかなくなったりした時点で、「自分はどこか人とは違う」という違和感や「生きづらさ」を抱え込んだりするようになり、その段階で人から発達障害を指摘されたり、自ら自覚したりするようになる。また、うつ病や対人恐怖症、不安障害などの二次障害を発症してしまい、それがきっかけで発達障害が発見される人も増えている。(かえでクリニック検索)

質問に対する回答(要旨)

子どもへの対応を巡って家族間の意見が一致しない場合の対応

  子どもへの対応について家族間で意見が一致しない場合の対応は家族支援の領域になってくる。子ども自身への対応は皆さんの専門領域であるわけだが、家族支援かなり難しく、大きな労力を要する。この場合の基本的な対応としては、家族の誰かに荷担することなく、常に中立の立場を意識することが必要。例えば、お母さんの考えは○○ということなんですね。だけど、お父さんの○○なんですね。というような感じで聞き役に徹しながら、出来れば何となく妥協点を見いだしていく。そうやって意見がまとまっていくこともあるし、まとまらない場合もある。いずれにしても、その話の中心に常に子どもの存在があることが大切。

 また、例えば子どもに発達障害がある場合、皆さんは専門家だからそれに気づくと思いますが、保護者が気づいていない場合もある。この場合、皆さんとしては早く保護者にも気づいてもらって適切な支援に結びつけたいと考えると思うが、保護者への伝え方が難しい。こういう場合の対応としては、他の子どもたちと一緒になって遊んでいる様子を見せて、自分の子どもが何となく他の子どもと違うことに気づいてもらうという方法もある。対応のポイントとして、早く支援に結びつけることばかりを考えるのではなく、子どもが成人した時点をイメージしながら、今できることを考えること。例えば、気づいていない保護者や気づいていても認めたくない保護者に対して、すぐには支援に結びつかなくても、この時点で何らかの言葉で伝えておくことが大事。相手がそのときには納得していなくても、後に再度言われたときの受け入れに繋がることもある。相談の継続ということは大事なことだが、併せて私は、来談者と向かっている「今」を大切にしている。「一回完結」そして「一期一会」の覚悟で対応することが大事。

愛着障害と発達障害との関係

 愛着障害が原因で人との関わりを全く拒否してしまう子どもがいる。その子どもたちの行動は自閉スペクトラム症の子どもの行動パターンとよく似ていて、小児科や精神科の医師でも見分けが難しい。だけど、例えば養護施設に入所している子どもをよく観ていると、愛着障害が原因である子どもの場合は、施設に入って一年くらい経ってそこが安心出来る場所であると理解した段階でだんだん人と関われるようになってくることで見分けが出来る。

 また、養護施設に入っている子どもの中には、愛着障害を原因として先ほどとは逆に、やたらと人とべたべたとくっつきたがる子どももいる。これは他人との距離を詰めることで虐待にあわないようにという心理が働いていると思われる。発達障害のADHDの子どもも同じように、人との境界がなさ過ぎてあるいは受け入れてもらおうとして誰にでもべたべたとくっつこうとする。これについても、愛着障害に起因する養護施設の子どものケースは一定期間安定した環境にいることで症状が無くなってくることで見分けが出来る。

 境界型人格障害の人との対応について

  境界型人格障害の人の対応で特に留意すべきことは、仕事とプライベ-トの区別を明確にしておくこと。話をするときは、相手の味方であるとのスタンスを保ちながら、相手が電話をしてもよい番号とか時間帯等をはっきりと伝えて対応することが大事。そのように注意して対応しないと相手との関係がぐじゃぐじゃになってしまう恐れがある。

感想

  • とても役に立つ内容がぎゅっと詰まっていて、明日以降の仕事に役立つと思う。
  • 対応が難しい保護者への対応に生かせそう。
  • 対応する上で何でも抱え込まなくていいと理解できてよかった。
  • 現在直面している課題を解決する上でヒントになった。
  • 相談は「一期一会」のこころが大切だと理解出来た。

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