日時
令和3年9月30日(木)14:00~16:00
場所
徳島県職員会館
参加者数
21名
「被災者心理の理解とケアの方法」講師:佐藤 健二さん(徳島大学大学院社会産業理工学研究部教授)
大規模災害時における被災児童等の心理の理解とケアの方法について学びました。
講義概要(要旨)
トラウマとは
□広義:経験当時と同じ恐怖や不快感を当該個人にもたらし続ける出来事。出来事の性質は、必ずしも生命を脅かす危険なものではない。
□狭義:実際にまたは危うく死ぬ、重傷を負う、性的暴力を受ける出来事への暴露(直接体験、目撃、伝聞など)
PTSD:心的外傷後ストレス障害の症状□
①侵入症状
□外傷的出来事の反復的で侵入的で苦痛な記憶
□外傷的出来事についての反復的で苦痛な夢
□外傷的出来事の一つの側面を象徴し、または類似している内的または外的きっかけに暴露された場合に生じる強い心理的苦痛
②心的外傷的出来事に関連する刺激の回避
□外傷と関連する苦痛な記憶、思考、または感情の回避、または回避しようとする努力
□外傷ついての苦痛な記憶、思考、または感情を呼び起こすことに結びつくもの(人、場所、会話、行動、物、状況)の回避
③心的外傷的出来事に関連した認知と気分の陰性の変化
□外傷的出来事の重要な側面の想起不能
□自分自身や他者、世界に対する持続的で過剰に否定的な信念や予想
□持続的な陰性の感情状態(怒りなど)
PTSDの診断基準(6歳以下)
□実際にまたは危うく死ぬ、重傷を負う、性的暴力を受ける出来事への暴露
□外傷的出来事の反復的で侵入的で苦痛な記憶など(再演する遊びとして表現されることがある。)
□刺激の持続的回避、または認知と気分の陰性の変化(陰性の情動、遊びの抑制、重要な活動への関心または参加の減退等)
災害時の子どもの反応の理解と対処
□修学前の子ども:赤ちゃん返り他 ⇐ 安心感(一緒にいるなど)
□小学生の子ども:出来事について繰り返し話す他 ⇐ 話を聞く
□中学生・高校生:自分が感じている恐怖感他に対する周りの反応を気にする他 ⇐ 誰しもが感じていることを伝える
カウンセリングの実際
□「よく聞くこと」は心理的ケアの第一歩でありゴール、その意味では「話すと楽になる」「自分の辛い経験を話してもよい」ことをまず伝えておく必要がある。
□しかし、話すかどうかは被災者の意思で決めること
□話の終わりには感情が平静に戻るよう、生活の再建の話題等を拾う(体操やストレッチ、リラクゼーション法の導入もよい)
■言ってはいけない言葉:がんばれ(⇐これ以上頑張れないくらい頑張ってるのに)あなたが元気にならないと亡くなった人が浮かばれない(⇐悲しい時は泣いても良いという原則が守られていない)私ならこんな状況は耐えられない(⇐生きている自分を非難されたように感じる)
子どもと話すとき①「感情を読み取り、共感し、言葉を与えていく)
□注目したい、子どもの非言語的なサイン:言葉でうまく表現出来なくても、感情はさまざまな形で現れる。(表情、姿勢、緊張感など)
□子どもの状態に「波長合わせ」をする。
□よりよい対処の仕方を一緒に見つける
子どもと話すとき②「子どもが出来事を話すのを聞くときの注意点」
□家庭で、保育園や学校、その他支援的な関係のなかで、子どもに気がかりな様子がみられても、子どもが話したがらないことを尋ねて、かえって傷つけたりしないかと迷う。子どもを傷つけない、聞き方のポイント
◇日常の具体的な話から
・「しょっちゅうアザができている(仲良かった子たちと遊んでいない/ときどき一人で泣いている等)ようだけど、何かあったのかな?」
・(子どもの反応を見ながら)「どんなことでもいいから、教えてくれるとうれしいな」〈オープンクエスチョン〉
◇子どもが話出したら
・「そうなんだ話してくれて有り難う」〈根掘り葉掘り聞かない〉
・「そんな気持ちになるのはあなただけではないよ」〈心理教育〉
◇終わりに
・私が聞いておく必要があること、他にある?「今、どんな気持ち」〈安全性の確認〉
まとめ
■PTSDとは、トラウマに関して、侵入症状、刺激の回避、認知の気分の陰性の変化、過覚醒症状が1ヶ月以上続く障がい
■トラウマを聞くことは、心理的ケアの第一歩であり、ゴールであるが、話すかどうかは被災者の意思で決まる。
■子どもと話す時は、感情を読み取り、共感し、言葉を与える。
感想
- PTSDについて詳しく学べたのが良かった。
- 心的外傷を経験した相手には、話し方・聞き方に十分注意する必要があると理解出来た。
- 被災した子どもにとっても、「あそび」というものが大変重要なものであると理解出来た。
- 本日学んだことを活かし、今後相手の心に寄り添った支援を心がけたい。
- デリケートかつ大切な内容であり、現在の講義の時間数ではサポーター登録に不足だと思う。